不動産業界で働いていて、宅地建物取引士の試験に一発合格した僕が、初めてお部屋を借りる人にもわかりやすく解説しますね!
実際に、自分も賃貸物件を解約した際に思わぬ費用が発生したので、その経験もお伝えしますね。
その上で、退去費用が高額になりやすいケースと抑える方法3つの方法を解説しているので、ぜひ読んでください。
賃貸物件の退去費用 3選
退去費用とは、「原状回復費用」や「ハウスクリーニング費用」など賃貸物件を退去する際に発生する修繕費用のことです。
退去することが決まり不動産会社に連絡を入れると、不動産会社が物件を確認した後に退去費用が決定ます。
要するに、借りていた間につけてしまった傷や汚れを治すための費用です。
まずは、代表的な3つの退去費用を解説していきます。
①原状回復費用
借主が入居中に付けてしまった傷や汚れなどを治して、入居前のキレイな状態に戻すための費用が原状回復費用です。
傷や汚れがあると新しい入居者が見つからなくなるで、大家さんからすると原状回復は必須です。
入居時に敷金を支払っていれば、そこから原状回復費用にあてることが一般的となっていますが、敷金だけでは不足する場合は、退去時に別途請求されるケースもあります。
借主の負担でどこまで原状回復する義務があるのかについては、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で確認できます。
②ハウスクリーニング費用
次に、ハウスクリーニング費用とは通常の清掃では取れない汚れを落とすために清掃会社に依頼するのに発生する費用です。
- 床
- 畳
- 壁紙
- エアコン
- キッチンやトイレなどの水回り
全ての清掃費用が借主の負担になるわけではなく、基本的には借主の掃除不足が原因の損耗や汚れを負担することになります。
原状回復費用と同様で、敷金から支払われることが一般的です。
③賃貸借契約の特約による費用
その他にも、「特約」によって負担する費用が決められているケースもあります。
特約とは、物件ごとに適用される契約のことです。
- 原状回復費用の負担割合を事前に決めている特約
- 借主に過失がなくても特定の修繕費用を請求する特約
- ペットの飼育の許可に関する特約
実際に、自分がハウスメーカーから借りていた物件にも特約が付いていました。
6畳の和室にラグを引いていたので、畳に傷はほとんどなく退去費用を抑えられると思っていましたが、張替費用として3万円程の退去費用が発生したんです。
張替が必須と分かっていれば、期待しなかったので残念です。
賃貸借契約を結ぶ際には、どんな特約があるかを事前に確認しておくことが大切です。
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは?
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは、退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止するためのルールの事です。
原状回復に関するトラブルが多いことから、1998年に国土交通省が制定、2011年8月に改訂されています。
これによって、借主が負担するべき原状回復の範囲が明確化されました。
原状回復に関するトラブルの相談件数
賃貸借契約において、退去時の原状回復は大きな問題になっています。
原状回復に関するトラブルって年間どれくらいあると思いますか?
年間で1,000件くらいじゃないですか?
実は、2023年には13,247件もあったんですよ。
独立行政法人国民生活センターが運営している消費生活相談データベースによると、「賃貸住宅の原状回復トラブル」の相談件数は年間で約13,000件もあると言われています。
借主が負担する原状回復費用とは?
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のポイントは2点あります。
- 借主の故意・過失・善管注意義務違反などが原因の損耗や毀損は、借主が原状回復の負担を負う
- 経年劣化や通常の使用による損耗は原状回復費用には含まれない
要するに、故意や過失・不注意でできた傷や汚れが借主の負担とされています。
このように、借主がどの原状回復費用を負担しないといけないのかが明確化されています。
退去費用の相場を左右する2つの要素
退去費用はどのように決まっているのでしょうか?
大きく、「居住年数」と「補修箇所」によって退去費用は決まります。
①居住年数
居住年数が長いほど原状回復費用の負担は小さなりやすいです。
理由は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で紹介した通り、経年劣化による損耗は基本的には借主の負担ではないからです。
一般的には、6~8年経つと価値が無くなるように決められています。
※正しくは価値が1円になるのですが、分かりやすく価値が無くなるとしています。
設備 | 耐用年数 |
---|---|
カーペット | 6年 |
壁 | 6年 |
インターフォン | 6年 |
トイレの便座 | 8年 |
網戸破れ | 8年 |
②補修箇所
次に、設備ごとに発生する退去費用を見ていきましょう。
補修の箇所と内容 | 退去費用(相場) |
---|---|
浴室のカビ、水垢 | 5,000~20,000円 |
トイレのカビ、水垢 | 5,000~10,000円 |
キッチン周りの汚れ | 15,000~25,000円 |
床材の汚れ | 10,000~25,000円 |
サッシの汚れ | 10,000~20,000円 |
壁や天井の下地ボード取り換え | 20,000~60,000円 |
床材の張り替え(1枚当たり) | 8,000~15,000円 |
クロスの張り替え(1m²あたり) | 800~1,000円 |
全ての費用が発生するわけではないですし、費用も不動産会社によって異なってきますので退去時に必ず確認するようにしてください。
賃貸物件の退去費用の決め方と相場
退去費用にはどんなものがあり、基本的なルールも解説してきました。
ここからは、実際に退去費用がどれくらいかかるのかを具体例と共に解説していきます
退去費用の決まり方
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の中で、原状回復は大きく3つの項目に分けられています。
- グレードアップ
- 経年劣化
- 借主の故意、過失、善管注意義務違反リスト
この中で、借主負担とされているのは「借主の故意、過失、善管注意義務違反(図解のB)」によるものとされています。
①グレードアップ
「グレードアップ」とは入居者が退去するタイミングで、設備を最新のものに入れ替えることで大家さんが負担する費用になります。
物件の価値を向上させて、入居者募集を促進することが目的なので、借主が負担する必要はございません。
②経年劣化
時間の経過とともに設備が劣化していくことを「経年劣化」と言います。
- 家具設置によるへこみ
- フローリングや畳の日焼け
- カレンダー設置などによる画鋲の穴
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、経年劣化による損耗は月々の家賃に含まれているとされています。
その為、退去時の原状回復費用として発生することはありません。
③故意・過失・善管注意義務違反
借主の清掃不足や管理不足などによる劣化は、借主が負担する必要があります。
- 床の腐食
- 壁紙への落書き
- ペットの臭いや汚れ
- 鍵の紛失による交換
- 清掃を怠ってできた油汚れ
これらは、日ごろの清掃や部屋を丁寧に扱うことで抑えられるので、めんどくさがらず日々清掃を行うようにしましょう。
退去費用の相場
当たり前ですが、部屋が広かったり、部屋数が多いとその分退去費用が高くなる傾向にあります。
参考までに、部屋数別の退去費用の目安をお伝えいたします。
補修の箇所と内容 | 退去費用(相場) |
---|---|
ワンルーム、1K (20㎡~30㎡) | 15,000~30,000円 |
1DK, 1LDK (30㎡~50㎡) | 20,000~40,000円 |
2DK, 2LDK (50㎡~70㎡) | 30,000~50,000円 |
3DK, 3LDK (70㎡~90㎡) | 50,000~60,000円 |
4DK, 4LDK (90㎡~) | 90,000円~ |
- 単身向けの物件であれば約4万円
- ファミリー向けの物件であれば約6万円
これくらい退去費用として発生すると考えておくといいかもしれませんね。
退去費用で高額請求されやすいポイント 4選
①タバコのヤニ汚れや臭い
タバコを吸う人は、部屋にタバコのにおいがつかないように気をつけましょう。
室内でタバコを吸うと、臭いが付くだけでなく壁にヤニが付着して壁紙の張替えが必要になります。
6畳の部屋の壁紙を交換する場合、約4万円の費用が発生すると言われています。
タバコを吸うときはベランダで吸うなど、部屋に臭いや汚れが付かないように心がけた方がいいかもしれません。
②ペットの臭いや傷
ペットを飼っていると、退去費用が高くなるケースがあります。
というのも、どれだけ気を付けて使っていてもペットが部屋を傷つける可能性があるからです。
- 部屋にペットの臭いが残っているケース
- 床や壁に爪痕がついているケース
- 柱に歯痕が残っているケース
ペットを飼っている方は、退去費用が高くなるのは覚悟しておいた方がいいかもしれませんね。
③DIYによる傷
最近流行っているDIYですが、壁に穴をあけると退去費用が高くなるかもしれません。
カレンダーをかける程度の画鋲であれば、問題ないと言われています。
でも、壁に穴を開けたりすると借主負担の原状回復費用として請求されます。
賃貸物件でDIYをするときは、壁に穴をあけない、ねじを付けないなどを意識した方がいいかもしれません。
④カビ汚れ
掃除を怠ったことでこびりついた汚れやカビは、簡単に落ちず原状回復費として請求されます。
- カビ
- 水アカ
- 油汚れ
- 床の腐食
日ごろの掃除をきちんとすることで、これらの汚れは防止できます。
ガイドラインの「善管注意義務」に該当するのでめんどくさがらずに、掃除をする習慣をつけるようにしましょう。
退去費用を抑えるために必要な3つのこと
退去費用は、物件を返却するうえで大きな費用となります。
最後に、退去費用を抑えるためにきおつけておくべき3つのことを紹介していきます。
①入居前の状況を記録しておく
1つ目は、「入居時に部屋の状況を記録しておくこと」です。
大家さんが前の入居者がつけていた傷を見落とすこともあるからです。
入居時に初めから傷がついていたことを証明しないと、退去費用として請求されるケースがあります。
不動産会社によっては、「入居から7日以内に写真を送ってください。」と言われることもありますが、高額な退去費用を請求されないためにも、めんどくさがらずに記録をとっておきましょう。
②入居前に契約内容をよく確認する
次に大事なのは、賃貸借契約時に「契約内容をよく確認すること」です。
物件を借りて新生活にわくわくしているタイミングなので、つい聞き逃しがちですが、退去時に後悔しないように気を付けて下さい。
自分も、畳にラグを引いて綺麗に使っていたので退去費用を抑えられると思っていました。
しかし、退去時に畳の状態にかかわらず張替費用が発生する特約が付いていたので、全く意味がなく約3万円の費用が発生したので、反省しました。
なので、賃貸借契約時に退去費用について必ず確認するようにしておきましょう。
③日常的な清掃を怠らない
部屋をきれいに保つために、日々の清掃も大事です。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で説明した通り、借主の故意・過失・善管注意義務違反による傷や汚れが原状回復費用として請求されるからです。
一度カビやシミが付いてしまうと、なかなか取り除けないので原状回復費用として請求されるケースが多いです。
特に、床に水をこぼしたまま放置していると、木材が腐ってしまい取り返しがつかなくなります。
退去費用を抑えるためにも、借りた部屋はきれいに使うように心がけましょう。
まとめ
この記事では、賃貸物件を退去する際に発生する費用について解説してきました。
- 退去費用にはどんなものがあるか?
- 原状回復に関するガイドライン
- 決まり方と相場
- 高額請求される4つの落とし穴
- 退去費用を抑える3つの方法
入居時の説明をしっかりと聞き、日々の掃除により抑えられるケースもあるので、借りた物件はきれいに使うように心がけましょう。